RunningBasement

記事詳細
HowTo

当サイトはAmazonアソシエイト・アフィリエイト広告を利用しています。

乳酸を再考する。LTの理解を深めてマラソン効率完走!

LT(乳酸性作業閾値)の強化は

マラソンのパフォーマンスを向上させるには最重要です。

マラソンで走ることができるペースは

LT(OBLA)を超えることはありません。

この時の血中乳酸濃度は

3〜4mmol/kg程度と言われています。

八田著「乳酸P.37より」

 

つまり、LTが低いランナーは

毎日3時間走って長く走れる体を作っても

LTの向上がなければ、

スピードの面から頭打ちになるわけです。

 

今回は、

マラソンのパフォーマンスに大きく左右するLTについて

深掘りしたいと思います。

 

LTとは

LTの正式は”Lactate Threshold”です。

“Lactate”は日本語で”乳酸”を意味し、

“Threshold”は”閾値”を意味、

二つを掛け合わせて”乳酸性作業閾値”と訳されます。

 

筆者
乳酸って何?疲労物質ではありません!

 

乳酸とは:乳酸はエネルギーの元!

ランニングは糖と脂肪を一定の割合で利用し

エネルギーを生み出します。

 

糖(グルコース、グリコーゲン)は主に速筋でエネルギーを生みます。

身体を動かすために必要なエネルギーであるATPを

2つ作ります。

(酸素を使わないので無気的解糖系)

 

この時にピルビン酸ができ、

ピルビン酸はTCA回路で25ATP作ります。

(TCA回路は酸素を使った代謝なので有気的解糖系。)

 

この時に、

TCA回路で使われないピルビン酸が乳酸に変換されます。

糖よりも扱いやすい状態である乳酸として、体内に置いておくのです。

 

筆者
乳酸は疲労物質ではなくエネルギーの元です

糖の代謝経路

糖の代謝経路は画像の通り。

糖でさえこれだけ変換経路があります。

(脂肪はもっと複雑な代謝経路です)

乳酸は、変換直前で体内に置いておく

「エネルギーの元」であることがわかります。

 

また、

純粋に酸素なしで生み出せる解糖系(無気的解糖系)は、

2ATPのみ。

TCA回路で産むエネルギーは25 ATP。(有気的解糖系)

これが解糖系が持久力に向かない理由です。

解糖系トレーニングの理論と実践

 

ランニングとLT(閾値)の関係

非常に低い運動強度から

運動強度を上げていき(ランニングペースを上げていく)、

その時の乳酸の濃度を測ると

最初(運動強度激低)は

乳酸濃度はそんなに変化しないのですが

さらに強度を上げていくと、

乳酸濃度が上がるポイントがあります。

このポイントをLTと呼びます。

乳酸濃度が変わらない変わらない変わら…変わったああ!という場所のこと!

乳酸濃度は一般的に1〜3mmol程度と言われています。

 

第2の閾値=OBLA

LTの強度から、さらに運動強度をあげていくと、

もう一度、乳酸濃度が急激に上がるポイントがあります。

これを第二の閾値「OBLA」と呼びます。

乳酸濃度は一般的に4mmol程度と言われています。

 

OBLAと第二の閾値の乳酸濃度はトレーニングで変化する?

.

OBLAで走れる強度は一般的にはアスリートレベルのハーフマラソン、

フルマラソンはOBLAより少し低いあたりと言われています。

そしてこのOBLAの乳酸濃度は4mmolと言われています。

この時の乳酸濃度は「第二の閾値」とほぼ同じと言われています。

 

しかし、トレーニングによって

「第二の閾値」の乳酸濃度を大きく向上させることができる

というデータもあります。

神奈川大学の駅伝部を対象にした研究(外部リンク)では、

「第二の閾値」が現れた時の乳酸濃度が7.4mmolだったそうです。

OBLAと「第二の閾値」が一致しなくなっているということです。

つまり、トレーニングによって乳酸(が溜まっている際に起こる体の動かなさ)への

緩衝能力が上がっていると考えることができます。

 

 

 

LTを鍛えるには作業筋の酸化能力を高める

乳酸は、ミトコンドリアで酸化することで

エネルギーに変換することができます。

 

乳酸+酸素=二酸化炭素

 

乳酸を多く酸化させることができるようになれば

速度が上がった時に血中濃度は下がるということなので

LTでの速度は上がることになります。

 

持久走では乳酸の産生を減少させる

持久トレーニングによって乳酸の最大産生量が減少することがわかっています。

これは脂肪利用能力の向上の影響かと思います。

乳酸を出すトレーニング、乳酸を使うトレーニングは別で考えることができるので

やはり期分けが重要であると思います。

 

乳酸を出すということはより中長距離においてスピードを出せるということです。

乳酸を使えるということは中長距離において長く走れるということです。

この二つはトレードオフの関係にあるため、

目標のレースに向けてトレーニングの比率を考える必要があると思います。

 

筆者
乳酸を出すトレーニング(解糖系)→乳酸を使うトレーニング(乳酸系)の順番!

 

トレーニングの焦点

 

以上のことからトレーニングでは

・乳酸を作ること

・乳酸を利用すること=筋の酸化能力を高めること

が重要と言えそうです。

 

乳酸を作る(放出)トレーニングというのは

LTを超えるような強度のトレーニングです。

いわゆる高強度域。

 

乳酸を利用(取込)するトレーニングというのは

LTより低い強度(低強度、中強度)のトレーニングです。

最大下運動なので、

十分な刺激が入るなら刺激時間を意識して取り組みます。

 

LTは幅がありますが、

LTの発現以降、

乳酸処理能力(乳酸取込み能力)が変わらないと仮定するなら、

それ以降の強度上昇は無駄です。

 

筆者
無駄に強度を上げると運動時間を確保できない

 

 

 

LT発現あたりで刺激時間を意識しながら取組むことが重要であると言えます。

 

 

以下で具体的トレーニングを紹介します。

 

具体的トレーニング

長距離走・持久走

長く走ることで、乳酸を再利用しながら酸化能力に刺激を与えます。

このトレーニングの目的は、酸化能力の強化です。

 

重要なので何度も説明しますが、

LTとは、乳酸の産生(放出)と乳酸の利用(取込)がつりあっている状態です

 

つまりLTの向上のためには、

乳酸の利用を高めることが有効であると言えそうです。

(※作らないと利用もできないので産生も重要です)

 

乳酸は主に、

速筋で生成され、血中へ放出し

遅筋で取込み、遅筋内のミトコンドリアで利用され

エネルギーになります。

 

筆者
利用能力を高めるにはLT付近〜下強度で運動をすること!

 

 

 

ミトコンドリアの酸化能力を高めること!

ミトコンドリアで利用されるので、

ミトコンドリアの容量を高めることはLT向上に効果がありそうです。

ミトコンドリアの容量は長距離走によって増えますので、

乳酸の酸化能力を高めることができます。

 

長距離選手のためのミトコンドリアの基礎知識

 

ジョグで速くなるは本当

ある程度まではジョグだけで速くなれるというのは

長距離の基礎/一般的な能力指標であるミトコンドリアが増えるからです。

※トラックのような速いペースでの酸化能力とはイコールではないと思っています。

 

ですのでトレーニングは徐々に特異的にしていく必要があるものだと筆者は考えています。

筆者
まずはたくさん走る!そこから強度を上げる!

 

LTでのトレーニング

LTでのトレーニングも有効です。

乳酸を産生する能力と乳酸を利用する能力両面を

同時に最大時間刺激することができると考えられます。

 

LTはLTをたらしめる、放出と取込を同時に体に起こしている状態のこと。

トレーニングで言えばそれぞれを個別で能力を獲得していくのが重要で、

このLTでのトレーニングはそれら二つの能力を協調させるような

トレーニングであると考えています。

 

トレーニング強度を一定にしないことが重要

LTはトレーニングしなければLTで走れる速度は低下しますし、

トレーニングを継続していけば速度は上昇します。

 

LT強度はトレーニング過程の中で流動性のある強度です。

トレーニング初期と終期ではLT強度は変わるはずです。

 

筆者
LTは乳酸濃度や心拍数などを管理して漸進的に!

 

常に同じ強度でやると決めるのではなく、

漸進性を意識して取り組みます。

 

OBLAでのトレーニング

OBLAでのトレーニングも基本的な考え方は

上記と同じです。

OBLAの強度はLTよりも高くなるので、

20〜30分もつであろうペースで行います。

20分の持続走でもいいですし、

インターバル形式でもいいと思います。

 

ジャックダニエルズのランニングフォーミュラでは

クルーズインターバルとして紹介されています。

 

レストは短くする方が効果的だと思います。

疾走中に乳酸濃度を高い状態を作ることが大事であるので、

1本ごとの乳酸濃度は下げすぎずに走ること、です。

 

またその際のジョグかその場休息か、ですが

これに関してはどちらでも大差ないかと思います

強いて言えば、

静止よりもゆっくりでも走った方が乳酸濃度は下がる傾向にあるので

ジョグでつないでもいいかもしれません。

(アクティブレストの方が酸素を作業筋へ送り届けることができると考えられています。)

 

おすすめは疾走1000mごとに60秒のレスト

・1000m LTインターバルならレスト60秒ジョグ

・2000m LTインターバルならレスト120秒ジョグ

・3000m LTインターバルならレスト180秒ジョグ

 

 

どのレベルのトレーニングでも乳酸は作られるし使われる

ここまで具体的なトレーニングを紹介してきましたが

乳酸を理解していればなんとなく勘づくことがあります。

それは、どのようなトレーニングでも

乳酸は産生・利用されているということです。

 

筆者
ゆっくりジョグだと乳酸が、ほぼ完全利用されて蓄積されていないだけ!

 

専門種目に合わせた乳酸トレーニングが重要

マラソンなら、

マラソンペース前後でのトレーニング

マラソンペースであれば比較的長時間走り続けるととができますので

LTより低くても運動時間の確保で得られるLT向上効果は期待できます。

 

トラックなら、

種目よりやや長い程度の距離を、

レースペースよりもやや遅いペースでのペース走

 

スプリントインターバル(SIT)でもLTが向上

また、スプリントインターバルでもLTの向上は見られるようです。

こちらの研究(外部リンク)では

スプリントインターバルトレーニングが

持久トレーニングと同等程度の効果が

あったとされています。

 

むしろアスリートレベルでは、

中強度程度の刺激では LTはあまり向上せず

高強度インターバルの方が向上するという研究データもあるそうです。

 

SITの取り組み方

30秒程度の全力疾走を4〜6回繰り返すようなトレーニングとなります。

レストは4分となります。

長距離的に簡単なトレーニングで置き換えると、

200m前後の全力走、レストは4分を6セットとなります。

疾走は基本は全力ですので、高出力を出せるというのが必要です。

 

SITの嬉しいメリット

高強度インターバルは高い乳酸濃度でも

運動に耐えることができるようになります。

乳酸がたくさん作られるようなトレーニングでは、

乳酸が作られる筋での緩衝能力が高まります。

体に乳酸が溜まった状態でも

運動を続けることができるようになるわけです。

 

※補足ですが乳酸と疲労は関係はありません。

体が疲労を感じて動かなくなってくる時には乳酸濃度も高いことが多いです。

 

そう考えると、

やはりトレーニングは期分けの重要性も理解できます。

一般性のあるトレーニングによって様々な生理学的能力を高め

レースに向けてトレーニングを特異的にする

この考えが一番効率の良い考え方、

トレーニングの取り組み方と言えそうです。

 

LTの運動強度の決め方

 

LTの速度はどのように求めたらいいのかを解説します。

正確に計測しようと思うのであれば、

トレッドミル上で一定速度で段階的に速度を上げていき都度血液採取。

血中の乳酸濃度を計測し、

緩やかに上昇し出す速度と、急激に上昇する速度で求めます。

たとえ一度計測したとしても、

LTはその日の体調やトレーニングの段階によっても大きく変わります。

これは現実的ではありません。

 

そこで筆者が実践しているLTペースの決定方法をお伝えします。

 

心拍数で管理:最大心拍の80〜90%

LTでのペースはおおよそ最大心拍数の80〜90%程度と言われています。

ご自身の最大心拍数を把握することが必須条件ですが、

実践する中でも的確だなと思います。

 

筆者の場合だと、最大心拍数が196~200程度です。

200だと仮定した場合、LT速度はおおよそ160~180回/分を

超えない(or下回らない)程度であると考えられます。

 

実際に私も

LTトレーニングを行う際は

この心拍数範囲で行うようにしています。

 

心拍数で管理する場合、その精度がとても重要です。

時計のものは正直全く当てになりません。

心拍数でトレーニングを管理する場合は、精度の高い心拍センサーを準備して取り組むようにしてください。

 

 

vVo2maxより簡易計測

LTのペースはVo2maxで走れる速度に1.1~1.23(上限1.3)程度ではないかと思います。

1.1ならほぼOBLAに近く、1.3倍ならLTの下限に近いと思います。

これはジャックダニエルズのTペースとEペースの上限とほぼ一致します。

 

Vo2maxはおおよそ3000mのタイムトライアルの強度であるので、

3000mのラップタイムを元に計算するといいと思います。

 

時間の掛け算を、通常の電卓で行う場合の計算方法は下記の通り。

例:vVo2maxが3’00の場合

秒に戻し(3分*60=180)、そこに係数をかけます(180秒*1.1~1.3)

この場合のLTの幅は、3’18~3’54/kmとなります。

 

おおよそのタイムをVo2maxから計算し、

トレーニング当日は心拍数を管理しながら、

狙ったトレーニング強度から大きくハズレていないかを確認し行うことで

より効率的にトレーニングを行うことができると思います。

 

 

 

まとめ

今回はLTについての解説をしました。

・ LTには二つ閾値がある( LTとOBLA)

・乳酸溜まり出すポイントと急激に溜まり出すポイント

・どんなトレーニングでのLTは向上する

・低い強度から徐々にトレーニングを特異的に上げるのが基本

・高い強度(SITなど)はLTの潜在パフォーマンスを最大化させる

と理解されるとトレーニングの取り組みが深まると思います!

何より、閾値走ばかりのトレーニングプログラムよりも

トレーニングのバリエーションが増えて面白いと思います!

 

筆者が運営するまるお製作所RCでは、

効率的なトレーニングプログラムを毎月提案させていただいています。

詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

その他の投稿