【論文紹介】高強度トレーニングの有効性
今回は、高強度トレーニングの有効性を論文を紹介しながら解説したいと思います。
経緯
筆者自身のトレーニングは、
いわゆるポイント練習と呼ばれる高強度な練習と、
そのほかの日は低強度のトレーニング(いわゆるリカバリージョグ)で組み合わせたトレーニングを
メインで行っています。
今回紹介する論文でいう「POL(ポラライズトレーニング)」です。
昨今のSNSの発展により世界のトレーニングやトップアスリートのトレーニングを
誰でも手に入れることができるようになりましたが、その中でもトレンドにもなっている【二重閾値トレーニング】。
(極端に言えば比較的疲労の溜まりづらいトレーニングを数多くこなすようなもの)
上記の二重閾値や、HIITなどなど
トレーニングの介入方法はいくつもあり、どれが正しいのか?
自分に合うトレーニングは何なのか?を知りたくて今回の論文に行きつきました。
紹介論文
今回紹介する論文はこちら
「Polarized training has greater impact
on key endurance variables than
threshold, high intensity, or high volume training」
ポラライズトレーニングが閾値、高ボリューム、高強度トレーニングよりも能力向上に優れている
という内容です。
実験方法
研究では、15人のサイクリストと3人のトライアスリートが自転車エルゴメーターを使用し、
16人のランナー、6人のトライアスリート、および8人のクロスカントリースキー選手が電動トレッドミルを使用しました。
介入は9週間続き、介入前後にテストが2日間行われました。
参加者はトレーニング中は食事を変えず、筋力トレーニングを行い、
食物摂取は試験前3時間は許可されませんでした。
トレーニングの強度は心拍数によって制御され、
低、LT、高の3つの強度レベルが使用されました。
研究期間中の栄養摂取は標準化または管理されず、
心拍数は各トレーニングセッション中に測定されました。
各介入
トレーニングは高強度・低強度・LTの様々な組み合わせによる
4つのモデルを採用されています。
POL(Polarized Training):
トレーニングの大部分を低強度(LOW)で実施し、
高強度(HIGH)のトレーニングも行う。
低強度のトレーニングはトレーニング全体の約70-80%を占め、
高強度トレーニングは残りの20-30%。
HIIT(High-Intensity Interval Training):
短い高強度の運動とそれに続く休憩を繰り返すトレーニング。
短期間の高強度の運動と低強度の運動を交互に行う。
HVT(High-Volume Training):
長時間にわたる持久的な運動トレーニング。
週に3〜5回、それぞれが3〜5週間続く高強度のトレーニング。
THR(Threshold Training):
個々の適応範囲(トレーニングのしきい値)を改善するトレーニング。特定の心拍数や乳酸閾値に基づいて行われる。
9 週間のトレーニング介入期間内のトレーニング量とトレーニング強度の分布 (筋力トレーニングを除く)
POL | HIIT | THR | HVT | |
トータル時間(h) | 104 | 66 | 84 | 102 |
セッション回数 | 54 | 47 | 49 | 58 |
低強度の割合 | 68 | 43 | 46 | 49 |
LT付近の割合 | 6 | 0 | 54 | 16 |
高強度の割合 | 26 | 57 | 0 | 1 |
結果
結果は下記の通り。
POL: VO2peak、TTE、V/Ppeakの最大の増加をもたらしました。また、V/P4も増加しました。
HIIT: 体重が3.7%減少し、VO2peakが増加しました。V/P4も増加しました。
HVT: 代謝および血行力学的適応の改善が報告されましたが、VO2peakを増加させるにはより大量のトレーニングが必要でした。
THR: エリートアスリートの場合、VO2peak、V/P4、TTE、またはV/Ppeakの改善は観測されませんでした。
それぞれの介入によって異なるトレーニング効果が得られましたが、
POLが最も主要なパフォーマンス変数に大きな改善をもたらしたことが強調されました。
用語
Vo2peak…最高酸素摂取量
TTE…Time to Exhaustionの略。疲労までの時間を示す指標。
V/Ppeak…特定の運動における個人の最大ピーク速度とその速度での乳酸閾値を示す指標。
V/P4…Velocity/Power at 4 mmol/L Lactate Concentration。乳酸濃度が4 mmol/Lになる速度またはパワー。
POL | HIIT | THR | HVT | ||||||
9週間の介入 | 前 | 後 | 前 | 後 | 前 | 後 | 前 | 後 | |
最高酸素摂取量 | 60.6 | 67.4 | 63.7 | 66.6 | 63.2 | 60.8 | 60.5 | 62.1 | |
最大心拍数 | 187 | 186 | 182 | 180 | 180 | 179 | 183 | 183 | |
一定スピードでのVo2(RE) | 39.7 | 34.8 | 34.8 | 35.9 | 34.7 | 33.7 | 35.2 | 35.3 | |
乳酸値漸増運動負荷 | 2mmolでの心拍数 | 139 | 136 | 138 | 141 | 152 | 151 | 138 | 138 |
4mmolでの心拍数 | 157 | 157 | 163 | 162 | 171 | 169 | 160 | 162 | |
ピーク時の心拍数 | 186 | 184 | 184 | 191 | 187 | 184 | 187 | 184 |
個人の感想
最近読んだ「ランナーのからだのなか」でも高強度トレーニングの重要性を書かれています。
論文を読んで面白いなと思ったのは、THR(閾値トレーニング)による大きな改善が無かったということです。
今トレンドになっている「二重閾値」を単に「怪我をしない強度で継続するトレーニング」と勘違いして
自分なりに行ってしまうとパフォーマンス向上は見込めないかもしれません。
2部練習による適応をできるほどのトレーニングボリュームの確保が必要かもしれません。
最初に調べる原因となった「二重閾値」についての理解は進展しませんでしたが、
POLへの理解が深まったので今回はよしとします。
今のところ、筆者の「二重閾値」の理解は、一般的なトレーニーの2倍の練習をしている(それが可能)、という認識です。
一般的なトレーニングは一部練だと思います。
1週間で7回のトレーニング、そのうち2回はポイント練習。
しかし、「二重閾値」は2部練をメインで行う人は、週のトレーニング回数が14回となるので
比率で言えば、一日に2回閾値走を行っても比率は変わらないからこなせるのであろう、
という認識です。
また、トレーニングの運動頻度が各介入で違いがあるのはやや信頼性に欠けるのかもしれない…と感じました。
閾値トレーニングの有効性は、怪我なく大きな疲労なく継続してこなせることだと思います。
それであれば、【POL】よりも運動時間は長くなるような気もしますが、【THR】の方が確保できていません。
まとめ
今回は、トレーニング強度によるパフォーマンス改善について調べて見ました。
言えることとしては、やはり高強度トレーニングは重要であること、
LT付近でのトレーニングを取り組む場合は、ボリュームの確保が大事かもしれない、ということでしょうか。
最後にお知らせです。
今まで、いくつものテキストやwebメディアで学んだつもりになっていませんか?
実際結果につながりましたか?
トレーニングはある程度、お手本のような体系があります。
しかし結果が出る人と出ない人が分かれるのはなぜでしょうか?
最も大きな理由は「継続できない」です。
いつでも誰でもできるが故に、反面、トレーニングをしない選択をしやすい種目でもあります。
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