さが桜マラソン2024優勝体験記
さが桜マラソン2024を走ってきた。
レースから1週間、今思い返してもこんなにスリリングなレースは初めてで
すぐにでもマラソンをまた走りたいと思う。
今回の記事では記憶が鮮明なうちに当日のレースを
できるだけ詳細に残しておく。
いつか自分がブランクに陥った時に読み返せるように、
また、マラソンを本気で楽しむ方のカンフル剤になるように。
目次
さが桜マラソンの目標:入賞(優勝)
今シーズンの大きな目標はいくつかあったが、
一番の大きな目標は「さが桜マラソンで入賞(優勝)」を目指すことだった。
(優勝)としたのは、佐賀には実力のある実業団が2チームあり、
その在籍選手が出場するとしたら、今の自分では太刀打ちできないなと思い、
”カッコ”にした。
それでも心の中では、ワンチャンスもありえると考えながらこの目標にした。
ただし、
そのワンチャンスは今の実力ではありえない…
というのはわかっていたので、
まずはワンチャンスを掴める可能性である、
2時間15〜16分くらいでは走れる力をつけることだった。
そのために、やや強行スケジュールではあったが、
年間のスケジュールを【東京マラソン→さが桜マラソン】とした。
東京マラソンで、ここ最近2時間20分切れないところで低空飛行していた記録を打破して
さが桜マラソンに弾みをつけたいと思った。
東京マラソンでは目標には届かなかったものの、
自己ベストに近いタイムで走ることができて
今回のさが桜マラソンに望むことができた。
【東京マラソンへ向けたトレーニングを動画で見る】
レースの1週間ほど前、スタートリストの公表があった。
名簿を見ると、僕の持ちタイムよりも速いランナーは2名
(東海大学駅伝部出身の嘉村選手と同チームのまるお部長)
そしてタイムは僕よりも遅いものの、
マラソン大会での優勝経験もある選手が1名(友森選手)
おそらく僕とその3名でのレースになるだろうと思った。
ラストに強い、ランチューバーキラー友森選手
友森選手は下関海響マラソンというマラソンで
ラストの競り合いで2時間15分ランナーを破っている強者だ。
スタートリストを見ると有力選手はそのあたりで実業団選手の出場のなく、
おそらくレースは2時間20分前後で進むだろうとレースプランを考えた。
(たいていの場合、市民マラソン大会では、
やや牽制気味の3’20/kmでレースが進み
最終余裕が残った選手が勝つパターンが多い。
※最近は市民ランナー爆速化でこのパターンでないことも多い…)
レース当日
朝4時20分に起床。
レースは9時スタートなので4時間半前の起床。
いつもなら5時間前に起きるのだが、
最近は朝ごはんを軽く食べる程度にしたため
起床が遅く済むようになった。
まずは天気予報の確認と、公式ページのお知らせを確認。
この日は大雨でレースの開催すら危ぶまれていたが、
どうやら開催されるようだ。よかった。
当日の天気予報は、
スタートの9時には曇り時々雨の予報。
気温は最高19度。
気温19度は、マラソンを走るにはやや気温が高いが、
晴れてない分、気温ほど走りにくいことはないはず。
雨のためランニングギアを変更
雨の日は、いつものマラソン装備から少し変える。
まずはランパン。
パンツタイプだと、雨の水分を吸ってしまい
重くなってしまい走りにくい。
ということで今回は、タイツを選択する。
2XUのタイツだ。
直近で購入し気に入っていたミズノのバイオギア(レビュー記事あり)も使用したかったが
ポケットがないのが最大の欠点。
今回は使わない。
そしてソックス。
僕は毎レース、ソックスをその日の気分で選べるように
気に入って使っているイトイエックスとインナーファクトを携帯。
レース直前にどっちにするか決める。
通常なら雨の日は、薄く軽量なイトイエックスなのだが
直近の雨の日のハーフTTでやや水ぶくれができてしまい不安をよぎった。
どうしようか迷った結果、今回はインナーファクトを選択。
薄い方が、水を含まない利点はあるもののその分シューズとの擦れを体感しやすい。
(個人的にはこの感覚はややストレスに感じる)
※結果としてインナーファクトでもやや水ぶくれができてしまったが。笑
それでもこの二つのソックスは水はけも良く、
他のポリ素材よりも圧倒的に皮膚トラブルは少ない。
見直したエナジージェル戦略
また今回は、エネジージェルを3つ携帯。
モルテンを2つとアミノ酸の入っているジェルを1つ。
いつもはとっても2個、取らない時は1個なのだが
今回は積極的には10km以降5kmごとに5回に分けて摂取。
モルテンは固形のため半分食べてタイツにしまって次のタイミングで摂取。
こうしたのはSPドリンクと同じような摂取方法にしたかったため。
僕はSPドリンクを設置するときは
モルテンのドリンクミックス320を6個に分割して作る。
この摂取方法で現状はうまくハマっているので、
同じ摂取タイミングで同じ摂取カロリーをとりたかった。
ジェルは1個100kcal程度なので3個で同じくらいになる。
(後半エネルギー切れもなかったので、今後もこの摂取方法を試していく。)
ちなみに丸々1個取らなかったのはレース当日やや腹痛があったためでもある。
1個を一気に食べると一気に内臓に負担がかかってしまう。
その他の装備は普段通り。
まるおTに、スポーツ腹巻き、ノースフェイスのキャップ。
シューズは、今回はヴェイパーフライ3を選択。
NBのv4と悩んだが、雨でシューズが重くなると予想されたので、
今回は手持ちのシューズで最も軽いヴェイパーフライ3を選択。
いざレースへ向かう。
レーススタート
スタート直前に機材トラブルがありほぼアップもできず整列することに。
ノーアップ練習はよくやるのであまり心配はしていなかったが、
それでもいきなり3’10/kmとかで行かれると怖い。
そんなこともあり、前半から先頭を走り
4kmくらいはアップ感覚でいきたかったためペースは自分で支配したかった。
スタートと同時に先頭に立ち、予定通り集団を抑える。
3’22~25/km前後で進む。
ゼッケンNo3000.番台の伏兵
4kmいったくらいで本格的に3’20/kmでいくつもりだった。
佐賀城の直角のコーナリングがちょうど4kmなのだが
後ろから一気にペースが上がってくる選手がいた。
ゼッケンを確認すると3000番台。
完全なノーマーク、
体格を見るに遊びでやっている選手ではない
「…伏兵だ!」
びわ湖マラソン優勝の海外選手を思い出した。
こういった選手が潜んでいることは全然あるのだ。
ついていくか迷ったが…つかない選択にした。
まるお部長とは
前半3’20/kmで、後半余裕があれば3’15→3’12/kmと上げていく
というのがレースプランだった。
今回は最低の目標が入賞だったため、
想定外の高速展開で後半潰れてしまっては
去年の二の舞になってしまう。
(去年は30kmあたりまで余裕があったはずなのに
急に充電が切れたスマホのように全く機能しなくなった)
レースは、久保泉の工業団地付近(30km付近)からだ…と、
追いたい気持ちを抑え当初のレースプランで進めることにした。
伏兵を追ったのは友森選手だけだったというのも好都合だった。
こちらはペース走の予定で、まるお部長と二人で安定して走るつもりだった。
一方、前の二人はおそらく牽制のし合いになると思われる。
やはり順位のあるレースなのでペースメーカーばかりはさせられたくないはずだ。
こちらは安定して3’19〜3’22/kmくらいで巡行。
曲がり角ごとにタイム差を確認。おおよそ20秒。
最初で一気に開いたこの差は13kmくらいまでは、変わらず。
「想定より詰まっていかないな…」
この時点で僕の状態はあまりよくなかった。
左足の脛が非常に張っていた。
僕「調子どう?いける?」
部「これくらいなら、これ以上上がるときつい」
僕「どっちかは絶対に入賞しないと、優勝狙えるのは今回くらいだぞ」
正直僕は脛がもうきつくもしかしたら最後まで行けないかもなと思い、
部長に優勝争いは託そうと思っていた。
まるお製作所RCのリーダーとしてどっちかが入賞できれば、
一緒に走る部員のみんなの力になれる。
ただ自分も諦めたわけではない。
チームのためならどっちかが好走すればいいが、個人では違う。
自分の目標がある。
まずはこの脛の対処だ。
足首を上に向ける筋肉なのだが、
ここが張っているのをどうしたら解消できるか考えながら走る。
足首を上向きで固定するか、フォア気味で走るか…
色々と試行錯誤していたがあまり回復せず。
しかし、ふとロードが凸凹したところを走っている時に体を右側に傾けて走っていると
左の足の負担が減る。
地形を利用してうまく体のバランスをとる。
そのまま走っていると、ふっと右足の脛の硬さが消えてくれた。
まだ戦える!
ハーフ地点でレースは振り出しに!
こちらは二人で先頭を追走している。
ペースは安定して、1kmあたり3’20/km前後で追走。
先頭は牽制し合っているのか、少しづつ追いつく。
ハーフを少し通過した時点で先頭に追いつく。
ハーフの通過は70分20秒。
おおよそ3’20/kmのペースだ。
少しペースを上げて3’18/kmくらいで走る。
23kmくらいでさが桜マラソンの名物吉野ヶ里公園内に突入。
この公園内が前日からの大雨で非常に凄いことに。
コースの一部が足首までつかる水濠に。
これは想定外。
一気に足が重くなる。
そして靴下がずぶ濡れだ。
もしかするとソックスは、より軽量かつ水捌けの良いイトイエックスにした方がよかったかもしれない。
それでもこのコースはみんな同じ。
いちいち気にせず、レースに集中する。
吉野ヶ里公園を抜けて25kmを通過。
この5kmは16分28秒。
予定通り後半を少しづつ上げていきたいが…
腹痛が…
今はそこまで痛くないが…これを抱えて走るのはきついな。
この時点で部長が集団で漏れて、僕含めて3人。
僕が引っ張っているが後ろの2人はややきつそうだ。
ここで一度集団から離れてもおそらくそこまでペースは上がらないだろう。
僕はまだ余裕がある。
トイレで30秒ロスしても1kmあたり5秒づつ詰めれば、
6kmで追いつく。
30km手前で離脱しても最終盤には追いつきそうだ。
計算的に言えばここで離脱しても問題ない。
28km地点で一時離脱。ロスはおおよそ40秒くらいだった。
トイレを済ませ前を追う。
集団はどうやら別れているようだ。
3kmほどいったあたりで単独2位の藤田選手を捉えた。
32kmくらい。
この時点で前の友森選手も完全に捉えた。
およそ8秒ほどの差。
想定よりも早く追いついた。
1kmあたり10秒ほど縮めてきた形だ。
(僕が3’15/kmくらいなので、先頭は3’25/kmくらいに落ちている。)
明らかに友森選手のペースは落ちていた。
これは完全に自分に分がありそうだ。
しかし…
神様はまだこのレースはそう簡単には勝たせてくれない。
腹痛が再度襲う。
この時点で32km。
今トイレに行ったとしても35kmでは再度追いつけるはず。
ここは最後の叩き合いにそなえスッキリしておきたい。
そんな形で状況を処理し念仏橋を超えたあたりのトイレに駆け込もうとしたが…
ランナーで溢れかえっている。
ちょうどスライドで往路のランナーで混雑していた。
いきたいと思ったトイレでいけないのは誤算だった。
ここのトイレは使えない。
もう一つ先のトイレにしよう。
腹痛を抱えながらではペースがイマイチ維持できない。
友森選手も僕がほぼ追いついていることに気づいていないのかペースは上がっていかない。
3’25/km程度で約2km追走。
ようやくトイレがあった。
フードウェイの簡易トイレに駆け込む。
ここで約35km地点だ。
想定よりロスタイムが終盤まで食い込んでしまったが、
一回目のロスは3kmでつめたので、
同じようにいけば38kmでは追いつくはず。
ここで2回目のトイレへ。
このトイレでもアクシデントが…
勢いよくトイレに駆け込んだものだから、頭にかけていたサングラスが吹き飛び
落としてしまった。
落とすだけなら特に問題はない(トイレ内ということは問題ではあるが)のだが、
落とした衝撃でレンズが外れてしまった。
僕の使用しているエアフライのAF402は、レンズの取り替えができるタイプ。
これは想定外のトラブルだった。
レンズを装着する時間はもったいない。
片側外れたレンズをポケットにしまい、
片手にサングラスを持って走ることに。
今回は雨天でパンツではなくタイツ。
パンツならポケットに入れることができるが
タイツではサングラスをしまうポケットがない。
困った…
仕方なく両方のレンズを外して伊達メガネの状態で走ることにした。
雨だったので日差しは問題ないが、
想像以上にダサかった。笑
友森選手との優勝を賭けたマッチアップ
レースはというと、計画通りに38kmで追いついた。
30秒程度のロスを3kmで追いついているので
おおよそ1kmあたり10秒のスピードの差があることになる。
並べばすぐに追い抜けるだろうと思い、ここで勝負アリだなと思った。
この時の僕のペースは3’20/km程度。
追い抜く時に少しペースを上げた。
3’15/kmくらいだったと思う。
勝負あり!
と思ったが…
なんと友森選手がついてきた。
少しくらいならと思っていたが、しっかりとついてくる。
僕の方が、少しキツくなってきた。
簡単に抜けると思っていた分、さらにダメージがでかい。
ここはラスト2kmでペースを上げて引きちぎろうと思ってペースを緩める。
すると友森選手がペースを上げてくる。
(強っ…!)
ここは引いてしまうと、絶対に相手に余裕を与えてしまう。
前に出られたら引かずにペースを維持する。
そんな攻防戦が続き、40km。
あと2kmの看板までいったら仕掛ける。
と思ったら先に仕掛けられた。
一度ペースが落ちていたはずなので絶対にきついはずなのに…
友森選手の勝ちたいという気持ちが強すぎる。
友森選手はこういった展開で勝った経験のあるラストの絞り出しが上手い選手だ。
やばい負ける…
2位でもいいじゃないか。立派だ。
東京マラソンで自己ベストタイ、3週間後のさが桜で2位、立派だ。
そう弱気になった時に
Roadto佐賀で頑張ってくれたみんなのことを思い出した。
ここで勝たなければ示しがつかない。
もう一度自分を奮い立たせる。
前に出られたがさらにペースを上げる。
時計はこの間の速度を3’05/kmと示している。
友森選手が後ろにつく。
ペースを落とさない。
100m程度のスパートで緩めてしまえば相手に元気を与えるだけだ。
ここで勝負を決める。
ペースを落とさずそのまま1km。
この時のペースはおおよそ3’08/k m程度だろう。
勝負あり!
友森選手の姿が見えなくなった。
あとは勝者のウィニングロードだ。
この大会を一番に帰ってきた、唯一の先頭ランナーのみが受けれる
「すげえ…!」というゾクゾクする言葉
「トップ!トップ!」という高ぶる言葉
「はえー」というランナーが一番嬉しい言葉
これら全てが、今日この日の大会では、全て僕自身のものだ。
かけられる言葉を独り占めしてそのままスタジアムに。
ゴールタイムは2時間21分47秒。
優勝だ。
これで優勝大会が一つ増え、自身4回目の優勝。
富士山マラソン2019、湘南国際マラソン2019、BEYOND2022、
今回のさが桜マラソン2024。
まとめ
地元での優勝はこの上なく嬉しいものだ。
来年はディフェンディングチャンピオンとして
実業団選手が出場してきても勝負できるようにこの1年また鍛え直したいと思う。
動画でもぜひ
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