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長距離選手のプライオメトリクスの取り組み方

今回は、

長距離選手がプライオメトリクスに

取り組む意義を

長距離パフォーマンスにどう影響するのかという観点で

解説します。

 

長距離選手でプライオメトリクスや

ウェイトトレーニングに取り組んでいる選手は

そう多くはありません。

個人的には、長距離選手は筋トレ全般含めて

「補強」というイメージで捉えており、

あまりメインになるトレーニングではないと

考えている節があるのではないかと思います。

 

実際あながち間違えではなく、

やはり長距離選手のパフォーマンスに直結するのは

有酸素能力です。

有酸素能力は持久的トレーニングで主に鍛えることができますので

メインで行いたいのはやはり走り込みとなります。

しかし、

ウェイトトレーニングやプライオメトリクスに取り組むことで

有酸素能力の向上の頭打ちを打破できたり、

有酸素能力に貢献することができると考えています。

 

今回の記事では、

プライオメトリクストレーニングの基礎を解説し、

持久的パフォーマンスへの影響についてのメカニズムについても言及。

具体的な取り組み方も紹介します。

 

このブログの根拠

山田祐生
【プロフィール】
・高校時代陸上部(目立つ成績はありません泣)からブランク10年
・フルマラソン:未経験➡︎2時間17分台
・5000m:14分28秒、10000m29分52秒
全ての記録をセルフコーチング。

 

プライオメトリクストレーニングとは?

筋肉と腱を合わせたひとつのユニット、

このユニットのSSC(ストレッチショートニングサイクル)を

強調したトレーニングのことを

プライオメトリクストレーニングといいます。

 

 

プライオメトリクストレーニングは

スピードの向上はもちろんのこと、

持久的パフォーマンスを向上させる

という研究データも多いです。

 

 

プライオメトリクストレーニングによるスピードの向上

プライオメトリクストレーニングのトレーニング効果を

下記で解説します。

 

トレーニング効果

SSCによる筋腱の「機械的出力の増加」は

自体重を上方向へと移動させるスピードの上昇へとつながります。

 

機械的出力は簡単に言えば、その動作が生み出す力のことです。

SSCでは筋肉が力を発揮させます。

 

このスピードは、

推進方向へと転移できれば、

それはスピードの向上とイコールとなります。

 

ジャンプへの効果(上方向へのジャンプ力向上)

プライオメトリクスのジャンプ力の向上効果は、

他のトレーニング様式よりも効率的であると言われています。

ジャンプ力向上をメタアナリシスを用いて調べた研究では…

 

・プライオメトリクス:4.7~8.7%

・オリンピックリフティング:7.7%

・レジスタンス:2.4%

と、非常に高い向上効果が示されています。

 

また、

プライオメトリクスは、

ウェイトトレーニングと組み合わせることで

ジャンプパフォーマンスをさらに向上させるようです。

(=コンプレックストレーニングと呼ばれます。)

 

短距離走への効果

 

プライオメトリクストレーニングが

短距離走のパフォーマンスを向上させることは

素人的な視点でも容易に想像できるのではないでしょうか。

実際に、

短距離走とプライオメトリクススの関係を調査した研究データは

探せばいくつもヒットします。

 

そしてプライオメトリクスが与える

短距離走のパフォーマンス向上には、

最高速度への影響よりも、

加速局面への影響が大きいようです。

 

短距離走を速くするメカニズム

プライオメトリクスのトレーニング効果は

筋腱の「スティフネス」の向上が考えられます。

 

スティフネスとは…
スティフネスは、硬さを意味します。バネで考えていただくとわかりやすく、
硬いバネはそれだけエネルギーを蓄えることができ、

高い弾性エネルギーを高い運動エネルギーに変換することができます。

 

 

筋肉や腱には柔軟性は必要ない?

名前
筋腱が硬いのと硬めきれるは別の能力です。

筋の柔らかさはランニング障害を防ぐ意味でも重要な要素です。

 

足が速い選手ほど

・疾走中の脚のスティフネスが高い、

・ホッピング(プライオメトリクスの種目)中のスティフネスが高い

ということがわかっています。

 

プライオメトリクストレーニングによって

主導筋の筋力は増加しないものの、

腱のスティフネス(腱の伸ばされにくさ)が増加し、

プライオメトリクストレーニングにおけるブレーキ局面での

主導筋の筋活動は増加し、

拮抗筋の筋活動は減少するようになるようです。

 

これは股関節のプライオメトリクスで考えると、

股関節屈曲局面(スクワットでいうボトムポジション)で主導筋である、

大臀筋やハムストリングの活動が増加(大腿四頭筋の筋活動は低下)する

ということになります。

 

 

主働筋の筋活動の増加により、

より強力に腱を伸長させることができ

腱の弾性エネルギーが蓄えれるようになります。

 

 

その結果、

弾性エネルギーが運動エネルギーへと変換され

離地期での大きな力を生み出します

 

プライオメトリクストレーニングによる持久パフォーマンスの向上

短距離へのパフォーマンス向上は理解できたと思います。

では我々、長距離ランナーのパフォーマンスはどのように向上するのでしょうか?

 

プライオメトリクストレーニング(レジスタンストレーニング含)が

持久性パフォーマンスを向上させるということは

いくつかの研究からも実証されています。

 

長距離パフォーマンス向上の研究データ紹介

下記3つの研究ではランニング愛好家レベルから

アスリートレベルまで全ランナーにとって

有効な結果が現れているようです。

 

実験1

対象:ランニング愛好家(2km平均タイム11分20秒)

研究プロトコル:4週間のプライオメトリクストレーニングを追加

結果:2km走のタイムが平均2分30秒短縮

参考:Andrade:Effects of plyometrics training on explosive and endurance performance at sea level and high altitude.

 

実験2

対象:競技レベルの高いランナー(3km平均タイム10.28分)

研究プロトコル:6週間のプライオメトリクストレーニングを追加

結果:3km走のタイムが平均16.6秒短縮

参考:Spurs:The effect of plyometric training on distance running performance.

 

実験3

対象:国際レベルランナー(3km平均タイム8分30秒)

研究プロトコル:9週間のプライオメトリクストレーニングを追加

結果:中速度以降(18km/h)でのランニングエコノミーが向上

参考:Saunders:Short term plyometrics training improves running economy in highly trained middle and long distance runners.

 

これらの改善はVo2max等には変化がなく、

ランニング効率(ランニングエコノミー)の改善がメイン効果となっています。

ではなぜプライオメトリクストレーニングがランニングエコノミーを改善させるのでしょうか?

 

パフォーマンス向上のメカニズム

プライオメトリクストレーニングが

持久パフォーマンスを向上させるメカニズムとして

 

・神経-筋キャパシティの向上

・筋パワーの向上

・運動効率の改善

上記のような効果により改善されるのではと言われています。

 

まずプライオメトリクストレーニングの

一次効果として

神経-筋キャパシティの向上が起こります。

 

上記で述べたとおり

筋腱のスティフネスの向上により、

ブレーキ局面の筋発揮が高まります

これにより腱の伸長が促され弾性の力が増長されます。

そしてこの変化により、

筋腱の相互作用の最適化が促され、

結果的に筋パワーの向上や運動効率の向上に寄与します。

 

腱のスティフネスの高さ(腱を硬められるか)は、

 

位置エネルギー〜運動エネルギー〜弾性エネルギー〜運動エネルギーに

効率よく変換されることで

消費エネルギーを節約することができるようになります。

 

これがランニングの効率化につながり、

結果、

持久パフォーマンスの向上に

寄与していると考えられています。

 

プライオメトリクストレーニングは何をすればいい?

ここでは代表的なプライオメトリクストレーニングを紹介します。

 

レパートリーを増やしたい、

取り組み方をより専門的にしりたいという方は

こちらの本を参考にすると理解しやすいかと思います。

 

名前
DVD付きで動画でエクササイズを知ることができます

プライオメトリクスのトレーニングパターン

◯低強度

・両足アンクルホップ

・連続SQジャンプ

 

◯中強度

・両脚タックジャンプ

・片脚タックジャンプ

 

◯高強度

・両脚ホッピング

・デプスジャンプ

・バウンディング

 

これらを組み合わせて行うことで、

神経-筋のキャパシティ向上が見込まれ

筋パワーが上がり、

結果として運動効率を改善させることができます。

 

 

プライオメトリクスの頻度は?

低強度なものはウォーミングアップにも気軽に取り入れていただいても問題ないと思います。

逆に高強度なプライオメトリクスは頻度多く行うよりも、

週に1〜2回程度でおさめて、

一回一回のトレーニングに集中して行い強度を高めていくのがいいと思います。

 

 

筆者のプライオの取り入れ方筆者は、走練習のアップで

低強度のプライオメトリクスを行い、

週1〜2回行うウェイトトレーニングに合わせて

高強度なプライオメトリクスである

デプスジャンプなどを取り入れています。

 

個人的視点

長距離種目は有酸素代謝の割合がほぼほぼの結果を決める種目で、

その有酸素代謝は、頻度や量がものを言います。

つまり毎日走るのが大事だし、より長く走るのが重要になります。

 

そのため上記のような

プライオメトリクスは軽視されがちですが、

理解して行うことが

現状のタイムを一気に打破する秘策にもなりえると考えています。

 

理由は下記の通りで

・スピードの限界と有酸素代謝のキャパが近すぎる

・逆に有酸素能力の引き上げを行える

と考えています。

 

・スピードの限界と有酸素代謝のキャパが近すぎる

例えばこれは僕の実際のタイムですが、

200m 26秒、

400m57秒、

1500m3分51秒(Lap62-62-61-45(Last400m60秒))

がベストタイムです。

 

1500mのレースペースに余裕を持たせるには

400m57秒では遅すぎますし、

その400mを伸ばそうと思うと

200mのタイムが遅すぎます。

 

そこで200mのタイムを伸ばそうとした時に明らかに感じるのは、

足が前に出てくれない、回転(ピッチ)が明らかに上がらないということに直面します。

 

短距離が速い人が長距離も速い、

という相関関係は低いですが

短距離が速くなければ行き詰まるレベルが低くなってしまうのです。

 

名前

例えば、200mが36秒でしか走れないランナーはどれだけ頑張っても1500mで4分30秒は切れないでしょう。

このランナーは短距離のタイムを向上させない限り、

1500mのタイムの頭打ちは決まってしまっています。

 

 

 

・逆に有酸素能力の引き上げを行える

また、上記のようなことはアスリートのみに言えることで

マラソンで3時間を切りたい程度のレベルであれば必要ない!

と思われるかもしれませんが

これもまた誤った解釈だと思っていて、

プライオメトリクスを取り入れることで

マラソンサブ3もすんなりと達成することができるかもしれません。

それは、ランニングエコノミーの向上です。

 

メカニズムは上記で説明した通りで、

筋パワー向上が筋腱のスティフネスにつながり

ランニングのパフォーマンスを向上させます。

 

上記を踏まると、

市民ランナーの場合は、

まずは普段のウォーミングアップから取り入れ、

トレーニング前後での流しの感覚が変わることを実感できたら

本格的に取り組んでいくのがいいのではないでしょうか。

ジュニア世代の場合は

しっかりトレーニングプログラムに組み込むのが理想です。

走ること以外のトレーニングからタイムを伸ばすアプローチを考えるべきかなと思っています。

 

 

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