RunningBasement

記事詳細
HowTo

当サイトはAmazonアソシエイト・アフィリエイト広告を利用しています。

長距離選手のためのミトコンドリアの基礎知識

長距離・マラソン選手なら知っておいてほしい

ミトコンドリアの基礎知識とトレーニング方法を解説します。

 

ランニングベースメントでは

才能ではなく知識で速くなる

というコンセプトのもとトレーニング理論を解説しております。

 

こんな人はぜひ読んでください

・独学でトレーニングしている

・指導してくれる人がいない

・才能はないけど諦めたくない

・トレーニングの本質を楽しみたい

 

 

筆者
記事内の知識は基礎です。より詳しく興味を持たれた方はその分野を勉強進めてください。

 

 

ミトコンドリアは有酸素能力全ての鍵

人の体にはエネルギー代謝は下記の通り、

いくつかのエネルギー代謝を有しています。

 

・解糖系(詳しくはこちら)

・乳酸系(詳しくはこちら)

・脂肪代謝系(詳しくはこちら)

などなど

 

この中で有酸素代謝と呼ばれる

乳酸系代謝、脂肪代謝系は

使う原料が違えど

ピルビン酸をミトコンドリアでエネルギーに変換しています。

乳酸を使った代謝でも、脂肪を使った代謝でも

酸素を使ってエネルギーを生み出す有酸素代謝は、

ミトコンドリアが鍵となっています。

 

 

ミトコンドリアの量・質向上➡︎有酸素パフォーマンス向上

上記で説明した通り

ミトコンドリアはエネルギーを生み出す源です。

 

言い換えれば、

有酸素貢献率の高い長距離マラソンランナーは、

このミトコンドリアの量や質を高めることが、

パフォーマンスを向上させることにつながるのではないでしょうか。

 

このミトコンドリアの改善は

「量×強度」に依存します。

 

この刺激を継続的に刺激(=頻度)を与えていくことで

ミトコンドリアでのエネルギー生産力は高まります。

 

 

強度の低い持久走でも時間を確保できれば有意な効果がありますし、

刺激時間が短くても強度が高ければミトコンドリアの機能は高まります。

ただし、

継続しなければ大きな効果は得られませんし、

トレーニングを中断すればすぐに元に戻ります。

 

(下記で詳しく説明しますが、

デトレーニングではミトコンドリアのサイズよりも

機能性の減退の方がはやく起こります。

※詳細は下記見出しで解説)

 

名前
継続は力なり!

 

ミトコンドリアの適応

上記のようなミトコンドリアの適応は、

・ミトコンドリアを増やす・大きくする

・ミトコンドリアの機能を高める(内膜を増やす)

ことでミトコンドリアの活動が上がり、

結果として持久力の改善につながっています。

 

ミトコンドリアの数が多ければ

有酸素によるATP合成は増えますし、

ミトコンドリアのサイズが大きければ

活動量(有酸素によるATP合成)も増加します。

 

 

そして、

このミトコンドリアは内膜と外膜という

二層の構造になっているのですが、

この内外におけるH+(水素イオン)の差、

その差によるH+の流れがATP合成の駆動力となっています。

※下記トピックで詳しく解説します。

 

 

 

ミトコンドリアのサイズを数を増やしつつ、大きくしながら、

ミトコンドリアの機能性を高めることが

トレーニングの焦点となります。

それぞれのトレーニング方法を下記で解説します。

 

筆者
トレーニングとしては下記からが重要!

 

ミトコンドリアを増やす・大きくする

 

ミトコンドリアの数/サイズと有酸素能力の関係

 

上記でも説明した通り、

ミトコンドリアはエネルギー生産工場です。

数が増えるほど、サイズが大きくなるほど

生み出すエネルギーは多くなります。

 

このミトコンドリア容量の増加は

強度と時間に依存します。

つまり、

ミトコンドリアの数や大きさを向上させるには

トレーニングの量

もしくは時間を

継続(頻度)して刺激する必要があります。

 

強度を下げて量をこなす、

いわゆるLSDやジョグなどの有酸素運動でも

ミトコンドリア容量を増加させることができますし、

 

その逆の、

SIT(スプリントインターバルトレーニング)のような

高強度(低時間)のトレーニングでも

ミトコンドリア容量を増加させることができます。

 

SIT(スプリントインターバルトレーニング)

高強度なスプリント運動を長めのインターバルを挟み、

複数回繰り返すトレーニング。

代表的なものは、

30秒のスプリントを

4~5分の休息を挟みこれを4〜7回行う。

強度はオールアウトを目指す程度。

 

(10秒のスプリントでも可です。

が、長距離ランナーには強度を上げるのが、

やや難しいように思います。)

 

 

LSDはミトコンドリアの新生効果があるということは非常に有名な話ですし、

SIT(スプリントインターバルトレーニング)が有酸素能力に与える影響も

研究で明らかにされています。

 

筆者
タバタトレーニングの効果も同じ原理だと思います!

 

数/サイズを大きく増やす方法

ミトコンドリアの数を増やす・大きくするには、

・できるだけ長く運動する持久走

・高強度なインターバルトレーニング

となります。

 

ミトコンドリアの数を増やすには

強度よりも量の確保が重要なようです。

しかし、

ある一定の量に到達したら、

量は増えにくくなります。

 

熟練したアスリートの場合、

LSDのような低強度のトレーニングでは

トレーニング効果が低いことは

ほとんどのアスリートが感じていることかと思います。

 

そこで、量ではなく、

もう一つの変数である

強度を意識してトレーニングを行う必要があります。

 

高強度なトレーニング(SITなど)で

LTが高まるのも、

高強度なトレーニングによる

ミトコンドリアの向上が一つの要因となっていると思われます。

 

LTの基礎とトレーニングについて】

 

筆者
高強度インターバルはMCT1の向上にもなるのでおすすめ!

 

 

 

ミトコンドリアの質を上げる(内膜を増やす)

内膜と有酸素能力の関係

内膜とは、

2層になっているミトコンドリアの内側の膜のことです。

この内膜は画像の通り凸凹の形状となっており、

これをクリステと言います。

 

内膜には、ATP合成酵素(大量のATPが作られます)がありますので、

このクリステを充実(内膜の表面積の増加)させることが

ミトコンドリアの機能の向上につながると言われています。

 

 

このクリステには水素イオンしか通さない小さな穴(複合体)があり、

この穴がミトコンドリアの内膜と外膜の間で

水素イオン(H+)を濃度の差を作ります。

内膜腔の水素イオン濃度が高まると、

濃度勾配で、マトリックス内に戻ろうとします。

 

元に戻るときに「ATP合成酵素」を通るのですが、

このATP合成酵素を通る際に、エネルギー源であるATPが生み出されます。

 

 

それがミトコンドリアでエネルギーが生み出されるメカニズムと言われています。

(電子伝達回路)

 

この水素イオンを運ぶ役割を持つのが、NADHとFADH。

このNADHとFADHはTCA回路で作られます。(下図)

ATPはエネルギー源です。

ADPからATPへ変化する際にH+が必要になるのですが、

ミトコンドリアのクリスタ(内膜)で

NADHからH(水素)を取り出し、ADPをATPへ変化させます。

この時、Hが取り出されNADHはNAD+になります。

よく教科書に書いてある絵の通りです。

 

内膜を充実させる方法

ミトコンドリアの内膜を増やす

=機能性を高めるには、

強度がとても重要な要素になります。

 

こちらの研究では、

運動強度がミトコンドリアの呼吸機能(機能性)の重要な決定要因となる、

と結論づけられております。

 

名前
高強度=速筋の活動が高い状態=LT2以上の速度です!

 

LTの詳しい解説はこちらの記事を確認ください。

 

一般的には、

Vo2max以上の強度で行うインターバルトレーニングが

ミトコンドリアのサイズを大きくすることができるようです。

 

また、

研究データでは

ミトコンドリアの機能性を高めつつ(強度を維持しつつ)、

容量を増やすには、

CV強度(おおよそ10kmのRP、90〜95%vo2max)あたりが、

量も強度も獲得できるのではないかと書かれています。

※論文中ではWattmaxで記載されているので筆者の解釈。

 

 

高強度のやりすぎはNG

では高強度トレーニングは

やればやるだけミトコンドリアの機能は向上するでしょうか?

答えはNoです。

トレーニングの原則は

トレーニング刺激からの回復

です。

 

名前
高強度トレーニングからの回復には2〜4日はかかります!

 

週5回の高強度トレーニングで有意に低下するといった報告

Mikael Flockhart(2021)より筆者作成

Mikael Flockhart(2021)より筆者作成

 

ミトコンドリアの機能の向上を調べた研究では、

高強度を高頻度で行った際に、

適切な負荷(週3回の高強度)のトレーニングと比較して

週5回行った高強度トレーニングを行った際の

ミトコンドリアの機能の向上が40%低下したと報告されています。

 

筆者
ベースよりも低くなっている。

この研究では

ミトコンドリアの質の低下は確認されず、

ミトコンドリアの機能(呼吸能力)が低下したと記されています。

 

強制的にオーバートレーニングをさせた事例として上記は研究されていますが、

高強度なトレーニングは重要ではあるものの、

行いすぎはNGであることの裏付けとなります。

 

まとめ

ミトコンドリアにおけるエネルギー産生の能力を高めるには

①サイズや量を増やす必要がある

②能力を高める必要がある

③その他、乳酸をいち早く運ばせたりする能力の開発も必要?(MCTなど)

 

つまり人体の構造は複雑で何か一つで決めることはできない。

 

このミトコンドリアのサイズ・機能を高めるには

「量×時間」で決まり、

量を増やすような低強度持久走では①の能力が高まり

高強度なインターバルトレーニングでは①②の両方が高まります

 

 

ランニングベースメントが提案するトレーニングプログラムの基礎でもある、

リディアードの期分けでは、

ブロック1の「週160km走る」が、

ミトコンドリアの数を増やす刺激

ブロック2の「ヒルスプリント期」が、

ミトコンドリアの機能を高める刺激

となっているものと思われます。

 

今のように科学がまだ進んでいない中、

手探りと自身の勘で

ここまで考えてやられていたリディアード氏には感服です。

 

 

 

参考:

Excessive exercise training causes mitochondrial functional impairment and decreases glucose tolerance in healthy volunteers

Training-Induced Changes in Mitochondrial Content and Respiratory Function in Human Skeletal Muscle

10 or 30-s sprint interval training bouts enhance both aerobic and anaerobic performance

Adaptations to Endurance and Strength Training

その他の投稿