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【知らないと速くなれない?】ジョグの生理学的効果と実践

 

今回はジョグの生理学的効果とトレーニング現場での活用方法を解説します。

 

ジョグはトレーニングの基本であり、

トップ選手から運動初心者でもトレーニングの大半を占めるものです。

 

トレーニングの大半を占めるジョグ、

そのトレーニング効果を考えずに行ってしまうのはもったいない。

この記事では、

ジョグ(有酸素ラン)の生理学的な効果と、

実際のトレーニング現場への実践まで解説します。

 

このブログの根拠

山田祐生
【プロフィール】
・高校時代陸上部(目立つ成績はありません泣)からブランク10年
・フルマラソン:未経験➡︎2時間17分台
・5000m:14分15秒、10000m29分52秒
全ての記録をセルフコーチング。

 

 

ジョグと有酸素ランニングの違い

一般的に言われるジョグと言うのは、

疲れない強度で走ること

追い込むトレーニングのつなぎ

と言う認識かと思います。

 

「ジョグ」に、これ!といった決まった定義はありませんが、

このランニングベースメントでは、

ジョグ=

LSD強度、心拍では120回/分以下、

40%Vo2max以下の強度、70%LT以下の強度

のことをジョグと定義します。

 

これ以上の強度から

LTの強度より遅い範囲は、

有酸素ランニングと定義し解説します。

 

vVo2maxと有酸素ランとジョグの強度

vVo2max vLT(Vo2max*1.3) 有酸素ランニング ジョグ
2’30 3’15 ~4’13 4’13~
2’45 3’34 ~4’38 4’38~
3’00 3’54 ~5’04 5’04~
3’30 4’33 ~5’54 5’54~
4’00 5’12 ~6’45 6’45~
4’30 5’51 ~7’36 7’36~

 

vV02maxは7〜10分全力で走れる速度。

おおよそ3000m走った時の平均ラップが、

vVo2maxとなります。

vLTはおおよその値でVo2maxの1.3倍(1.2~1.3倍)と言われています。

 

この有酸素ランニングとジョグの二つは明確に違うということが

リディアード式では書かれています。

実際にどのような違いがあるのかは下記で解説して見たいと思いますが、

リディアード式で有名な言葉【週160km】は、

ジョグでこの距離を走るのではなく、有酸素ランニングで構成されなければならないとされています。

有酸素ランニングを行い、その補助的なトレーニングとしてジョグを用いて行うように書かれています。

 

 

 

 

ジョグ(LSD強度、ゆっくりジョグ)

一般的にはLSDで使われる強度です。

定義は書籍や研究データによって様々ですが、

広く言われるのは心拍120/分以下とされています。

(心拍120以下はリディアードのランニングバイブルより)

 

 

上記画像は筆者がスポーツセンターで計測した全身持久力テストの結果。

 

筆者
筆者で言うと、1km6’00/kmより遅いあたりと言えます。

 

また後述する

「有酸素ランニング」よりも遅いペースを「ジョグ」

というのが一般的かもしれません。

 

ジョグの生理学的な強度

・心拍120/分以下(最大心拍はおおよそ200前後と予測)

・50%Vo2max以内

おおよそこのあたりの強度が指標となると思われます。

 

50%以下の強度という定義は
中長距離のランナーの科学的トレーニングより引用しています。
こちらの参考図書では、

55%vo2max以下の強度でのランニングは有気的な改善をもたらさないと記載されています。

 

ジョグの主観的な強度

感覚的に伝わりやすいのは「ピクニック気分で走る」という感覚。

とにかく疲れないペース、

いつまでも走っていられるペースと言えます。

 

アメリカの名コーチ、ビルボワマンは

自身のLSD理論の説明の中で「鍛えよ、だが無理をするな」と言うセリフで

LSDを説明しています。

 

 

ジョグの生理学的な効果

50%Vo2maxの強度は

おおよそ心臓の1回拍出量が

プラトーに達する強度となります。

(上図参照)

 

非鍛錬者の場合、

40~60% Vo2maxを超える強度では、

心拍出量の増加は心拍数の増加が起因します。

 

つまりジョグでは、

拍出量の変化への影響が最も大きいトレーニングと言えそうです。

(=1回拍出量の強化)

心拍出量=1回拍出量×心拍数
で成り立ちます。

心拍数は最大値が決まっているので、

心拍出量を高めるには1回拍出量の能力向上が必要条件となります。

この1回拍出量は、心室の拡張末期容積から収縮末期容積で決まります。

トレーニングにより、ふくらはぎによるミルキングアクションによる

静脈韓流量が増加し、その結果、拡張末期容積(=心室に戻る血流量)の増加します。

スターリングの法則で拡張末期容積が増加すれば心室収縮力が高まりますので、

1回拍出量が高まるのです。

 

 

 

 

この強度を超える強度では、拍出量は最大に達し心拍数の増加で

心拍出量を増やします。

心拍数の増加と運動強度は比例するので、運動時間を稼ぎにくいです。

 

つまりジョグは、

疲労と運動能力向上の費用対効果でみて、

効率的に心室収縮力を高めるトレーニングと言えます。

 

疲労の要因が心拍数に起因すると考えるなら、

心拍を無駄に上げずに拍出量の最大を狙えるジョグは効率的と言えます。

ただし、この拍出量のプラトーは鍛錬者では出現しないと言われます。

トレーニング歴が長い熟練ランナーの場合、

下記で説明する有酸素ランニングを取り入れていくべきかと思います。

 

 

 

 

 

 

有酸素ランニング

アーサーリディアードの定義によれば

「最高安定状態」の70〜100%の強度を有酸素ランニングと呼びます。

 

 

 

有酸素ランニングの生理学的な強度

リディアードの定義で言えばLT1強度の70〜100%

これは筆者で言えば4’33~3’30/kmくらいの強度となり、

この速度帯の強度は

心拍数なら139〜159回/分

Vo2maxの割合で言えば、60〜70%Vo2maxとなります。

 

 

 

有酸素ランニングの主観的な強度

有酸素ランニングの主観的な強度は、

走り終えた後に心地よく疲れ、走ろうと思えばもう少し長く走れるくらいの強度

となります。

この強度感であれば翌日に疲労を持ち越さずに終えることができます。

この有酸素ランニングを実際に行ってみると、

決してラクなものではありません。

ふつうにややきついかなと感じることもあります。

 

 

有酸素ランニングの生理学的な効果

リディアードは

費やせる時間を考慮すると

この有酸素ランニングこそが最も効率の良いトレーニングと自信の本で書かれています。

また熟練したランナーであれば、拍出量のプラトーは出現しないため、

LSDの強度では時間をかける必要があり、トレーニングに費やす時間が莫大になります。

トレーニングの負荷は、

時間*強度*頻度

です。

LSDのようなジョグでは強度が不足する分、時間や頻度をかけなければいけません。

時間は有限ですので、

有酸素ランニングこそが最も効率の良いトレーニングというのは理にかなっています。

 

 

トレーニングとしてのジョグと有酸素ランニング

ジョグや有酸素ランニングの意義は

トレーニングのボリュームを増やし、基礎的な能力を向上し

特異的なトレーニングに耐えうる回復力や足の耐性を作ることにあります。

つまり両者の違いにより獲得できる効果は

熟練者かどうかで使い分けすること重要だと筆者は考えています。

ある程度トレーニングを積んだランナーであれば、

ジョグでは生理学的な効果を得るには強度が低くなるため

有酸素ランニングに切り替える必要があると思います。

 

 

回復力とは

有酸素能力の向上はすなわち、体内の酸素運搬能力の高さとイコールです。

また有酸素トレーニングによりミトコンドリアの質・量が増加し毛細血管の発達に繋がります。

運動による肉体の疲労からの回復には血流量の増加(酸素量)が必要とされますが、

https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/pages/71369/jp.php

有酸素運動により発達した心拍出量や毛細血管は、

血流を増やし疲労の回復を促進しているものと思われます。

 

 

ゆっくりジョグが心臓を強くしない理由

低強度トレーニングはEDV強化ではなく下肢によるミルキングアクションを含む

循環系全体の適応と考えた方が良いと言う、参考文献もあります。

こちらの文献には…

人の身体は、血液を循環し、血液を通して必要な素材を全身に送り届けると言う形で

成り立ちます。

この血液の循環には心臓がポンプの役割で血液を送り出しているのですが、

下肢まで送った血液は重力に逆らい心臓に戻ってこなければいけません。

この際に活躍するのが「第二の心臓」と言われるふくらはぎです。

ふくらはぎがポンプの役割を持ち、心臓に血液を送り返す役割をしています。

低強度なトレーニングでの拍出量の上昇は、この下肢のポンプ機能が大きく貢献するため、

純粋な心筋の強化にはならないと言うことです。

心臓の拍出量のみでなく、運動によるふくらはぎのポンプの役割による補助が、ほとんどであると書かれています。

EDV=拡張末期容積。心室が最大に拡張したときの血液の量

ESV=収縮末期容積。心室が収縮した後の血液の残りの量。

1回拍出量:SV(ストロークボリューム)=EDVーESV

心拍数を上げていなければ、純粋な心筋の収縮力向上はできない。

逆に心拍数の上昇に伴い心室拡張期が短縮するので、より強力に心室の拡張収縮を余儀なくされる。

これを行えるようにするために、左心房の収縮力が補助し、心室のポンプを短く強力に行えるように適応していく、

と言うことです。

 

ちょうどいい範囲がLTの70〜100%有酸素ランニング

何度も書きますがトレーニング負荷は時間*強度*頻度です。

上記の通り、強度を上げれば運動時間は減り十分な刺激を確保することができませんし、

強度が低すぎれば、心臓の適応を起こすことができない可能性もあります。

適度に負荷を高め、運動時間も確保できるのがLTの70〜100%の

有酸素ランニングと言うことになります。

 

 

トレーニングへの組み込み方

上記を踏まえトレーニングへの考え方を解説します。

最高安定状態(LT)よりやや低い強度で週間160km走れることが

長距離を行うには適正だとリディアードは言います。

また、時間が許すならば

ゆっくりジョギングを追加し

補助的にトレーニングを行うようにと言います。

基本形は、週のトレーニングをやや長いなと感じる程度の有酸素ランニングで

組み立てることがまず重要です。

週中に高強度なトレーニングや週末に高強度なレースを入れたりすることがなければ、

特段難しい内容ではないように思います。

この有酸素ランニングによる走り込みにより、

長距離を効率的に走るための能力を最大限高めることができます。

この段階のトレーニングが期分けの第一段階である「基礎」の走り込みにあたるのです。

 

 

 

トレーニングの実際

では実際のトレーニングの現場ではどうか?

実際に筆者自身トレーニングを行っていますし、

クラブチームで指導させていただいております。

その中で、感じる上記の考えが実際のトレーニングで通用するかを記したいと思います。

 

 

毎日の有酸素ランニングはしんどい

最高安定状態に近い速度でのランニングを毎日継続するのはなかなかしんどいはずです。

いわゆるジャックダニエルズ博士のVDOTでいうEペースが有酸素ランニングとなります。

毎日このペースでジョグし、できる人は週間160kmを目指しましょうというのが、

有酸素ランニングによる基礎の走り込みです。

筆者で言うと、4’04〜3’34/kmで走る必要があると言うことです。

サブ3のランナーの場合、5’14〜4’38/kmが毎日のランニングのペースとなります。

週160kmなので一日平均で24km走る必要があります。

筆者自身めちゃくちゃしんどいなと感じますし、

指導させていただいているみなさんのトレーニング状況を見てもほぼほぼこのペース帯で走れている人はいません。

ではなぜこのペースで成り立たないのでしょうか?

 

高強度な練習が年間を通して入っている

常にこの状態を作る必要はない

 

 

理由①高強度な練習が年間を通して入っている

市民ランナーの場合、年間を通して高強度トレーニングを行っていることが多い印象です。

全国各地で様々な練習会が開催されておりますが、大半の練習会では

ポイント練習と言われる高強度なトレーニングが用意されていることが大半です。

高強度な設定タイムに加えて、練習会では競う相手がいますので

走れすぎてしまいます。

トレーニングの強度を高めるという点では良いのですがその反動は必ず疲労として翌日以降に現れます。

こういった疲労の蓄積が、

翌日以降のランニングに影響を与えてしまい、ランニングのペースが落ちてしまい

LSD強度になってしまうものだと思います。

練習会で行うトレーニングはレースに向けて特異的なトレーニング

(例えば5000mに向けた1000m*5やマラソンに向けた30km走など)が大多数なので

疲労を伴います。

 

 

理由②常にこの状態を作る必要はない

常にこの最高安定状態に近い速度でランニングをする必要はないのかもしれません。

この有酸素ランニングは、マラソンのコンディショニングトレーニングのプログラムの第一段階です。

つまり身体を作るためのトレーニングだと言うことです。

年中この一定きつい程度の速度でランニングを楽しむ必要はないのです。

ピーキングの第一段階だと考えていただけると良いのかと思います。

これらを踏まえて、実際のトレーニングプログラムでは、

基礎期には、

有酸素ランニングの上限でインターバルやテンポランを行い、

下限でつなぎのランニングを行う。

特異期には、

疲労を伴う高強度なトレーニングが入ってくるため

つなぎのランニングは疲労を抜くことを最優先に考えて

ゆっくりジョグを行う。

疲労感もなく可能なら有酸素ランニングを行う

と言う形で、その時期に必要なトレーニングを優先して行うようにするのが良いでしょう。

 

筆者
いわゆるポラライズドトレーニングの典型的な形になります。

【ポラライズドトレーニングについては下記記事参照】

【論文紹介】高強度トレーニングの有効性

 

基礎期:有酸素ラン中心、特異期:ジョグと高強度の2極化

 

筆者自身トレーニング歴も長くなり、

感覚的に感じているのは、

基礎期はジョグの質は高く、高強度なトレーニングはさほど入らないような

いわばトレーニングの密度が高い状態。

 

特異期になると、いやでもレースを再現したようなトレーニングの割合が増えます。

トレーニングの刺激が高いのでその分疲労も感じます。

そうなると、トレーニングは高強度な特異的なトレーニングが優先され、

その他のつなぎの日、いわばリカバリーの日にはジョグのような強度で、

次の高強度練習に備えるような形になります。

 

 

 

まとめ

以上、ジョグと有酸素ランニングの生理学的効果を解説し、

実際のトレーニングでの取り組み方を解説しました。

 

・ジョグは初心者向けのトレーニングである

・回復力は、有酸素ラン<ジョグなのでリカバリーを促進させる

・鍛錬者ほどジョグでのトレーニング効果は薄くなる可能性がある

・有酸素ランニングはそこそこきついが、無駄なトレーニングを入れなければ毎日継続できる

・基礎練習として有酸素ランニング

 

 

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