【月間走行距離】ジョグを理解するとマラソンが効率良く速くなる
目次
ジョグの理解
ジョグは、比較的ゆっくりとしたいくらでも走れる強度とします。
強度で言うと50〜65%Vo2max程度の強度とされます。
なぜジョグを行うのか
ではなぜジョグを行うのでしょうか。
長距離ランナーにとってのジョグの効果は、
- ・どれだけでも走れる身体を作るため
- ・回復力を高めるため
なのかと思います。
どれだけでも走れる身体を作るため
走れる身体とは脚筋力の持久力のことです。
長距離種目は、一定の長い距離を、できるだけ早く走る種目です。
その種目の特性上トレーニングでも長く走るようなトレーニングも多いです。
そのため、長く走っても耐えることができる脚の筋力が必要です。
回復力を高めるため
トレーニングの基本は負荷(刺激)と回復です。
トレーニングにより体には負荷がかかり、その結果疲労をします。
その疲労から回復する過程で、人は少しだけ前回よりも耐える身体を作るために、
以前よりも少しだけ体力が向上します。(恒常性※)
恒常性とは、体温、血糖値、pH値などの生理的なパラメーターを一定に保つ能力のことです。
これはホメオスタシスとして知られ、
体内の調整機構によって維持されます。
例えば、体温が上昇すると汗をかいたり、血糖値が上昇するとインスリンが分泌されるなど、
体は内部環境を一定に保つために様々な反応を示します。
人の体は一定を保ちたい性質があるので、運動という外部からの刺激に毎回毎回、
「疲労-回復の波」を作りたくないのです。
体は徐々に、ちょっとの刺激には耐えれるようにするために、
刺激に対して、前回行った時よりも少しだけ耐性がつくのです。
恒常性と疲労についてはこちらの記事でも解説しています。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
初めてのラン | ラン | 休(筋肉痛) | 休(筋肉痛) | 休(筋肉痛) | 休(筋肉痛) | 休(疲労感じる) |
回復(翌日走れる)
|
⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎ | |||||||
初心者 | ラン | 休(筋肉痛) | 休(疲労感じる) | ラン | 休(筋肉痛) | 休(疲労感じる) |
回復(翌日走れる)
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⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎ | |||||||
中級者 | ラン | 休(疲労感じる) | ラン | 休(疲労感じる) | ラン | 休(疲労感じる) |
回復(翌日走れる)
|
⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎ | |||||||
上級者 | ラン | ラン | ラン | ラン | ラン | ラン |
回復(週一で回復できる)
|
最初は週に1回のジョグに対して、
1週間回復に時間を要していたものが、
徐々に3日ほどで回復することができるようになり、
週に2回のジョグができるようになります。
その後も継続していると週に2回だったものが3回走っても回復するようになり
それが4回となり、負荷からの回復力が高まっていくのです。
なぜジョグでこのような効果があるのかについて少し詳しく説明します。
ジョグの生理学的効果
ジョギングのような比較的強度の低い強度で長く行う持久的トレーニングでは
毛細血管の密度を高め容量を増加させることができます。
またミトコンドリアの量を増加させます。
毛細血管の密度、の増加は
- ・最大運動中の筋血流量を増加させ、
- ・ミトコンドリアへの酸素拡散距離を低下させるとともに
- ・血流速度を遅くし、毛細血管から筋繊維への酸素拡散のためにより多くの時間を確保できるようにします
またミトコンドリアの増加は
- ・筋肉が酸素を消費する能力を増大させ
- ・動静脈酸素較差を増加させる
効果があります。
ジョグは回復力を高める!?
人間の体には恒常性が備わっています。
上記でも説明した通りです。
これは、正常な状態を保つために、
異常事態から正常時に戻そうとする働きのことです。
回復力とはちょっとやそっとの外部ストレスではすぐに回復させてしまう状態です。
マラソンで月間走行距離が必要と言われるのは、
トレーニングの負荷に素早く回復するためです。
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スペシャルブロックというレナートカノーバ氏が取り入れらているトレーニングがあるのですが、
それは1日の午前午後にポイント練習を行うトレーニングです。
これは回復力・適応スピードを意識的に身体をバグらせる
(回復力をより高める)ものなのかもしれません。
カードゲームで例えるとわかりやすいかもしれません。
ドローは基本1ターンに1枚(回復力)です。
手札のカードは条件が整えば上限なく使えます(トレーニング)。
手札を使ってばかりでは、
手札の補充が間に合わない(回復が追いつかない)のです。
ドローできる回数を増やす(トレーニング負荷への適応)必要があるのです。
カードゲームでは難しいですが、
実際のトレーニングでは回復力を高めることができるのです。
ジョグの総量は行えるトレーニングの総量を増やすことができる
上で説明した通り、
週に1回しか走らない方よりも
週に6回走った方の方が回復力が高いです。
そして毎日5kmしか走らない人よりも
毎日20km走っている人の方がやはり回復力は高くなると思います。
Vo2maxトレーニングや、LT走、解糖系スプリントなどの
通常のトレーニング以上に負荷のかかるトレーニングを行うには、
回復力を高めておかないとならないのです。
そのため、期分けでは基礎構築期間という、とにかく長く走る期間を設けるのです。
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再度カードゲームに例えます。
ジョグを増やすことで、ドローをたくさんすることができるようになります。(回復力が高い)
ドローを増やすということは手札をたくさん増やすことができるということです。
手札がたくさん増えればたくさん使用することもできます。(=トレーニングをたくさんできる)
手札を使ってもまたドローできる状態なので、たくさん試行回数を回すことができます。
ジョグと特異的トレーニングの割合
ジョグが回復力に関係することに関して解説してきました。
ここではジョグの量とパフォーマンスの関係を深掘りしたいと思います。
マラソンに最も特異的なトレーニングといえば、
マラソンレースペースに近い40km走が挙げられます。
筆者はマラソンレース前のトレーニングとして40km走を数回取り入れます。
レースの6週間前から1ヶ月かけて、多ければ4回ほど行います。
こういったトレーニングプログラムをこなしていく中で、
疑問に思うことがありました。
それは、この40km走と月間走行距離の関係性です。
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具体的な例を挙げます。
月間走行距離1200kmのAと、
月間走行距離450kmのBがいるとします。
両者のポイント練習である40km走の強度は全く同じとします。
この場合、トレーニングの効果はやはり全然違うのではないでしょうか。
1200km走るAの場合
1200km走るAの場合、毎日40km走っているのですから、
おそらく40km走というポイント練習は
そこまできついものではないでしょう。
おそらく翌日も通常通り40km走れると思います。
トレーニングは刺激と回復のバランスなので、もしかするとやや刺激は不足するのかもしれません。
(もしかするとこの場合、ポイント練習である40km走はすぐに回復しきるので、
週に2回行えるかもしれません。そうすれば回復と刺激のバランスも良くなり、
トレーニング刺激も多くできるのでもしかするとパフォーマンスは上がるかもしれません。)
450km走るBの場合
では月間450kmのランナーBはどうでしょうか?
1日の平均走行距離は15km程度になると思います。
Bにとって40km走というトレーニングは非常に負荷が高いと考えることができます。
とても大きな刺激だと考えられるので、
とてもいいトレーニングのように思えます。
しかし、こちらの場合、
トレーニングの刺激が高すぎてオーバートレーニングになる可能性もあります。
トレーニングの原則として、
オーバートレーニングは禁忌です。
回復が間に合わず、不調に落ちいってしまいます。
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月間走行距離は多すぎても相対的にトレーニングの刺激が不足し、
逆に少なすぎると刺激が強すぎて不調に陥りやすい…
おそらくこの月間走行距離(月1200なのか月450なのか)のどこかに
最適な月間走行距離とマラソンの特異的トレーニングである40km走の関係性があるのだと思います。
筆者としては、この最適な距離は640km以上、800km以下なのかなと思っています。
ジャックダニエルズのランニングフォーミュラでは、
ロング走の最長距離は、週間走行距離の25%までを上限としていますし、
リディアードのランニングトレーニングでも、週160km走るというのはとても有名です。
(週160kmだと月640kmになります。)
週間160kmの場合、25%できっちり40kmとなります。
(160km × 25% = 40km)
そう考えると、おおよそ月640kmがマラソンを走る上では必要な月間走行距離なのかなと思っています。
上限を月800km以下としたのは正直、筆者の想像でしかありません。
筆者自身、月800kmという距離を走ったことがありませんので想像です。
▼詳しく読みたい方はこちら。とてもわかりやすいトレーニング理論です。▼
しかし、走れば走るほどマラソンが速くなるというのは、
おそらくありえないと思いますので、
このくらいが上限なのではないかなと思っています。
この、ジョグと40km走の関係は、ジョグをスープ、40km走を濃さに例えて
筆者は「ラーメン理論」と呼んでいます。
「ラーメン理論」は動画でも解説しています。
月300kmではマラソンは走れないのか?
月600kmの方がパフォーマンスを発揮できそう、ということを解説しました。
では、少ない距離ではパフォーマンスを発揮できないのでしょうか?
結論、できると考えます。
自身のパフォーマンス最大化は難しいかもしれませんが、
少ないトレーニングでもパフォーマンスを上げることはできると思います。
現に筆者も、月400km弱のトレーニングで
フルマラソン2時間18分で走ることができました。
少ないトレーニングでマラソンのパフォーマンスを高めるには、
短い種目(トラック種目)でのパフォーマンスを向上させることが重要だと思います。
フルマラソンとなると、やはり種目の特性上、長く走れる体はとても重要ではありますので、
そうなると走行距離は多い方がいいのは事実だと思います。
しかし、トラック種目のパフォーマンスが高ければ、相対的にマラソンは高いレベルに引っ張られます。
5000m 19分(3’48/km)で走る月間走行距離800kmランナーと、
15分(3’00/km)で走る月間走行距離400kmランナーでは、
フルマラソン3時間(4’15/km)で走る可能性が高そうなのは後者であると思います。
これは走る速度に対して必要なエネルギー量が後者の方が少ないからです。
これを相対負荷を言います。
そしてトラック種目は、ある程度距離を走っていなくても伸ばすことができます。
トラック種目の最長は10000mですので、特異性を考えれば10000m走れる持久力さえ持っておけばいいので、
極論ですが30kmも走る必要はないのです。
短い距離でのパフォーマンスが向上すればマラソンペースの相対負荷は下がるので、
短い距離でタイムを伸ばすことで少ない走行距離でマラソンのタイムを伸ばすことも可能かと思います。
まとめ
今回の記事では、ジョグの理解を深めるためにジョグを行う意味や生理学的効果を解説しました。
- ・ジョグは回復力を高め、質の高いトレーニングの適応を起こしやすくする
- ・ジョグは多すぎても少なすぎても良くない
- ・マラソンでは月600km走れると最適化しそう
ぜひ参考にして取り組んでください!
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