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厚底カーボンシューズってなんで速く走れるの?【論文紹介】

今回の記事では、カーボンシューズのランニングエコノミーへの影響を考察した

最新の論文がありましたのでそちらを紹介します。

 

先に筆者の感想を軽くまとめますと、

厚底カーボンシューズのような股関節優位で動かしてくれるシューズを履くことで

アキレス腱のような末端のオーバーユースは防げるのではないかということです。

ただし、「人間本来の動きが改善されて」というよりは「シューズのおかげで」ということは

知識として考えておく必要があるなと感じました。

 

今回紹介する論文

【カーボンファイバープレート内蔵厚底ランニングシューズによるランニングエコノミーへの影響】

(外部リンク)

 

背景

近年、長距離ランナーの記録が向上していますが、

ランニングシューズの選択が成績に影響していると考えられます。

特に、カーボンファイバープレート内蔵の厚底シューズが注目されています。

シューズの特性はランニングの効率性に影響を与えます。

この研究は、

シューズがランナーの動きや筋肉活動にどのように影響を与え、

パフォーマンス向上につながるかを調査しています。

 

方法

・参加者:
10名の男性長距離ランナー。
レベルは5000m14分33秒前後の選手。

・使用したランニングシューズ:
研究で使用した2つのランニングシューズを履かせた。
ヴェイパーフライ(カーボンプレートとZoomX)とストリークフライ(カーボンなし、ZoomXではない)

・実験内容:
研究では、2つのシューズを被験者に履かせた。
エネルギー代謝とランニングのバイオメカニクス(身体の動きに関する要素)を評価。

・目的:
主な目的は、これらのシューズが、ランナーのエネルギー消費や身体の動きに
どのような影響を与えるかを調べること。

・結果:
研究から得られたデータを比較し、
シューズの違いがエネルギー代謝やランニングの
バイオメカニクスにどのように影響を与えたかを調査。

 

この研究の目的は、カーボンシューズの効果を理解するために、

10名の長距離ランナーを対象に実施されたものです。

シューズの違いがランニングエコノミーにどのような影響を及ぼすかが調査されています。

 

使用シューズ:

NIKE:ストリーク7(ST7)

NIKE:ヴェイパーフライネクスト%(VN)

 

 

 

結果

 

ヴェイパーフライ ストリーク
Vo2max 72.9±5.0 72.1±5.1 優位差なし
RE 1.04±0.05 1.11±0.06 優位に関係
接地時間 0.143±0.010 0.137±0.012 優位差なし
ピッチ 3.32±0.09 3.30±0.05 優位差なし
最高地面反力 35.1±5.4 33.6±5.8 優位差なし

 

・VOmax(最大酸素摂取量)について:
ランニングシューズの違いによる統計的な差は認められませんでした。
つまり、2つのシューズ間でVOmaxには明確な違いがありませんでした。

・RE(ランニングエコノミー)について:
ST7に比べて、VNを履いた場合、エネルギー消費が有意に低かったことが示されました。
これは、VNがランニングの効率性を向上させたことを示唆しています。

・Tc(接地時間)およびSF(ステップ頻度)について:
これらのバイオメカニクス的変数にはランニングシューズの違いによる統計的差が認められませんでした。

・下肢関節角度について:
特定の角度でランニングシューズの違いによる影響はありませんでした。
ただし、足関節の底背屈角度には主な違いが見られました

・FZ(鉛直方向の地面反力)について:
FZの最高値にも明確な差は認められませんでした。

・sEMG RMS(表面筋電図)について:
どの筋群でもランニングシューズの違いによる影響は見られませんでした。

 

また、高恩恵ランナーと低恩恵ランナーにおいて、

シューズの違いがREに与える影響と、

それに伴う関節角度や筋肉の活動についても述べられています。

 

関節角度について

・足関節の底屈位 (Dorsiflexion):

高恩恵ランナーはVN(カーボンファイバープレート内蔵ランニングシューズ)を履いた際に、

足関節が低屈位(足首が伸びた状態)であり、通常のランニングシューズST7を履いたときよりも足首が上向きに改善された。

これはVNを履いた際のアキレス腱の働きや弾性エネルギーの違いを示しています。

 

・膝関節の内旋位 (Knee Internal Rotation):

低恩恵ランナーはVNを履いた際に、膝関節が内旋位にありました。

内旋位は膝が内側に向く状態を指します。

このような膝関節の変化は、VNの着用が一部のランナーにとってREが低下する原因となった可能性があります。

 

・股関節の屈曲位 (Hip Flexion):

高恩恵ランナーはVNを履いたときに、股関節が屈曲位(腰が曲がる状態)でした。

股関節の屈曲位は一部のランナーにおいてREの向上に寄与しました。

 

これらの関節角度の変化は、ランナーごとに異なり、

VNの効果を受ける程度が個別に異なることを示しています。

 

ここまで読んだ感想一般的には足関節は背屈位が理想とされており、股関節優位で体を使うことが理想とされています。

また、膝の内旋(内向き)はカーボンの助力を受けにくいということだと思いますが、

これはカーボンシューズの足関節の屈曲サポートが股関節屈曲に寄与せず、膝の動きで代償しているのではないかと考えます。

 

 

 

考察

・この研究では、ランニングシューズ「VN」を履くことで、
ランナーのランニングエコノミー(RE)が5.7%向上することが明らかになりました。

・「VN」と「ST7」を比較すると、
VNを履いた場合、足関節が底屈位であることが示されました。
この変化がREの向上に寄与した可能性があります。

 

筆者
ここが今回、筆者が特に気になった部分です。

 

・高恩恵ランナーは、支持局面を通して股関節の屈曲位、足関節の背屈位、
および足関節の回内位が特徴的で、VNの利用によってREが改善されました。

・低恩恵ランナーは、支持局面を通して膝関節が内旋位であることが特徴で、
VNの着用によってREが低下しました。

・VNの特徴は、高反発素材「ZoomX」を使用したミッドソールや
異なるヒールと前足部の高低差(ドロップ)があることです。

・足関節の底屈位の変化やカーボンファイバープレートによるエネルギーリターンは、
REの向上に寄与する可能性があります。

・低恩恵ランナーには、VNの着用がREに対して有害である可能性があり、
特に膝関節内旋位と大腿二頭筋の筋活動に影響がある可能性が示唆されています。

・地面反力の測定が難しい技術的な課題がありましたが、
関節トルク(単純に言えば、関節を動かす力)よりも関節角度の違いがREに影響を与えたことが示唆されています。

 

現場への提言

ランニングシューズ「VN」の着用が足関節の動きに変化をもたらし

アキレス腱の弾性エネルギーの利用方法に影響を与える可能性を調査しました。

具体的には、VNは足関節を底屈(つま先を上げる姿勢)にし、

アキレス腱の弾性エネルギーの効率を低下させることが示唆されました。

しかし、VNはエネルギーリターンが高いため、

ランナーは速く楽に走れるようになり、

結果的にランニング効率が向上します。

 

ただし、この利点を維持し続けるためにはアキレス腱の特定の特性への適応が必要です。

他の研究からは、厚底ランニングシューズを履くことで足首周りへの負担は減少するが、

膝への負担が増加することが示されている。

したがって、長期的に厚底ランニングシューズを使用することが

膝関節のケガリスクを高める可能性があります。

論文の提案として、ランナーはトレーニングとレースのシューズ選択に慎重に考える必要があると言われています。

負担をかけたくない低強度のトレーニングには薄底ランニングシューズが適している。

高強度トレーニングでもアキレス腱のSSC(伸長反射)の低下を防ぐためには薄底を履いた方がいいのではないか。

レース時にのみ厚底ランニングシューズを使用することで、

ケガのリスクを最小限に抑えつつアキレス腱の弾性エネルギーを維持できるでしょうと述べられています。

 

結論

この研究は、「VN」を履いたランナーが、

通常のランニングシューズ「ST7」を履いたランナーに比べて、

ランニング効率(RE)が5.7%向上したことを示しています。

具体的には、VNを履くと足関節が下向きになり、

アキレス腱の弾性エネルギーの使い方に変化が見られました。

ただし、他の要因や走り方には明確な変化はなく、

VNの利点はアキレス腱によるエネルギーの利用(を減らすことができること)にあることが示唆されました。

 

また、VNを履いてREが大幅に向上したランナーは、

足関節の背屈、股関節の屈曲、足関節の回内といった特徴的な動きが観察されました。

これらの動きは、VNを履くことでREの向上に寄与する特性であると考えられます。

 

しかし、VNを履いてREが低下したランナーもいました。

彼らは、VNを履いた際に膝関節が内旋(膝が内側に向く)する傾向がありました。

この結果から、VNの利点が全てのランナーに適しているわけではなく、

特定の走り方や身体の特性によっては、逆にREが低下する可能性もあることが示唆されました。

 

感想

ここから筆者の感想を書きたいと思います。

 

現場への提言で書かれている内容ですが、

個人の感想としては、厚底シューズはアキレス腱を使わない走りになるのなら

通常トレーニングでも厚底シューズを使っていった方がいいのではないか?と感じました。

 

ランナーの理想は、足首の力の利用よりも股関節の力の利用が理想であると言われているからです。

これは足首の筋肉はそこまで大きくなく持久力に乏しいからです。

であれば、厚底を履くことによって、足首の力の利用を弱め、股関節の力の利用を高めてくれるのであれば

使っていってもいいのでは?と感じます。

筆者
※膝で代償しない、股関節のオーバーユースをしないことが大前提。

 

ただしこれは結局のところ、カーボンシューズを履きこなすように体を適応させるということだと思います。

人間の本来の体の使い方をシューズに適応させようとしているようにも感じますので、

注意して取り組み方を考える必要もありそうです。

 

現在、筆者は長い期間アキレス腱痛に悩まされており、

ヒップ(股関節)の機能を高める必要があると感じており、

そこに重点を置いて動き作りを行っています。

スピードを出しすぎると理想のフォームでは走ることができていないため

アキレス腱に痛みが出ていると考えています。

 

アキレス腱のSSC(足首で蹴る動作)に頼りすぎているのか、

理想のフォーム(股関節優位)が取れているようで全く取れていないのか…

という問題に直面しています。

 

となれば厚底シューズでトレーニングをして

股関節優位の走りを矯正させるのもありなのかもしれないと思いました。

※厚底シューズは走れてしまうので、アキレス腱の痛みから逃れられてもどこかにその代償がでることは考えなければいけないと思います。

 

今回は、カーボンシューズのエコノミーへの影響の論文を読み進め、

自身のランニングに良い影響を与えるにはどうすれば良いのか、

という内容で書いていきました。

考え方の一つの参考になればと思います。

 

 

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このブログの根拠

山田祐生
【プロフィール】
・高校時代陸上部(目立つ成績はありません泣)からブランク10年
・フルマラソン:未経験➡︎2時間17分台
・5000m:14分28秒、10000m29分52秒
全ての記録をセルフコーチング。

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